お日様のとなり

たとえば授業中の教室の静けさだとか。

青い空にぽつりと浮かんだ小さな雲だとか。

休み時間にお喋りを楽しむ女の子の横顔だとか。


ふとした時に、あぁ、今ここにカメラがあればなぁって思うことがたくさんあったのだ。


ほら、今だって……。

空き教室の窓からは、普段見ることのない景色が広がっている。


窓を開けて、両手を空に向かって伸ばす。

親指と人差し指を使って、目の前の世界を切り取ってみた。


屋上ではしゃいでいる生徒、緑のフェンス、澄み切った空、小さく見える飛行機。

どれもが鮮やかで、一瞬の世界は儚くて美しく見える。

「綺麗だ……」

「うん。今日はよく晴れて、空が綺麗だよね」

イチくんの声に頷くと、イチくんは「そうじゃないよ」と笑った。

イチくんの目に映る綺麗な物は別のところにあったのだろうか。

私は首を傾げた。

「みあ、明日は何か予定ある?」

明日は土曜日だ。

休みの日は買い物に出る程度で、特に大きな用事はない。

私は首を振って否定した。

「夏休みにちょっとしたコンクールがあるんだけど、みあも何か出してみたら?」

「コンクール?でも私まだ始めて2日も経ってないけど、いいのかな……」

「カメラの経験なんて関係ないよ。見る人に良いなって思われる写真が評価されるんだ。腕試しにもなるし、どう?」

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