お日様のとなり

遠くからひっそりとカメラを構えて、森園先輩のショットを一枚収めることに成功。

せっかくの遠出だからと、今日は昨日のコンパクトなデジカメではなく、レンズ交換の出来る高価な物を貸し出してくれた。

一眼レフというらしいけれど、昨日とは大きさも重さも使い方も異なるそれに、私は少々緊張している。

「使い方わかる?」

「うーん、普通に撮る分にはなんとか……。でも私にはやっぱり宝の持ち腐れというか、恐れ多いというか」

ゴツゴツとしたカメラボディを改めて色々な角度から観察してみる。

落としてしまわないようにベルトを付けて、しっかり首からも下げている。

でもこうしていると、いつものイチくんに少し近づけた気がして、気分が良い。

「みあにはやっぱり重いかな。手振れが気になるなら、AF設定すればいいよ」

「え、えーえふ?」

専門用語というやつなのだろうけど、初心者の私には分かり難い。

今度カメラの本を探しに本屋さんに行かないと。

「ちょっとそこ座って」

「え、あ、はい」

イチくんに言われて、私は通りにあるレンガで出来た花壇に腰を下ろした。続いて隣にイチくんも座る。

「へ?」

少し動けば肩がぶつかってしまうくらいの近距離具合に、変な声が出た。

それなのに。

「ちょっと貸して」

首からベルトを下げたまま、イチくんが私のカメラに手を伸ばす。

きっとさっき言っていた機能の設定をしてくれようとしているのだろう。

けれどカメラごと首が引っ張られて、不可抗力で顔までイチくんに近付いてしまって、この状況私は一体どうすれば……。

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