お日様のとなり

おかしいな……。
子どもを探していそうな人も見当たらない。

この子のお父さんとお母さん、迷子になったことに気付いていないのだろうか。

少し歩けばすぐに見つけられると思っていたけれど、これは些か時間がかかりそうだ。

海開きをしていないから、海の家も救護室も閉まっているし。

「あっ、みゃーちゃん見て!虫がいるよ!」

ふうちゃんが楽しそうにしてくれていることだけが、唯一の救いかもしれない。

「どれどれ?」

「きゃはははは!足がいっぱい!」

「ぎゃ!」

何これ。
真っ黒だし足がいっぱいだし、なにより動きが気持ち悪い……。

うっ、よく見れば岩の隙間にいっぱい集まってる。

そんなことをしていると。

「みあ、何やってんの?」

困った顔で笑いながらイチくんが前から歩いてきた。

「あ、イチくん。見てここ。虫がいっぱい」

「あー、フナムシだね」

「へー、フナムシって言うんだ。ふうちゃんフナムシだって」

虫の名前を教えるとふうちゃんは「フナムシ!フナムシ!」と嬉しそうに笑って眺めていた。

「ふうちゃん?」

イチくんはふうちゃんを見て眉根を寄せた。

あぁそうか。

ふうちゃんと一緒にいることが自然になりすぎて、ふうちゃんが迷子なことを一瞬忘れていた。

私はイチくんに迷子の子を見つけたことや、ふうちゃんの両親を探していることを説明した。

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