お日様のとなり

「俺、向こうから歩いてきたけど、それらしい人は見かけなかったよ」

「そっか……」

ってことは、向こうにはいないのかな……。

海と反対側にある高台をずっと真っすぐ歩いてきたけれど。

もしかしたら砂浜の方へ行ったほうが良いのかもしれない。

「ねぇ、みゃーちゃん。このおにーちゃん誰?」

「ふうちゃん、この人はね、イチくんって言うんだよ」

「いちく……?」

また違う呼び名で覚えてる。
子どもって本当に面白いな。

子どもの純粋さに感心していると、イチくんはふうちゃんの前にしゃがみ込んで目線を同じにした。

「違う。俺の名前はイチ。言ってみな」

「イチ?」

「そう。ちゃんと言えんじゃん」

「偉いな」とイチくんは目を細めてふうちゃんの頭を撫でた。

ふうちゃんは嬉しそうに「イチ!イチ!」と何度もイチくんの名前を呼んだ。

ふうちゃんはすぐにイチくんに懐いて、何がどうなったのか、最後には肩車をしてあげていた。

その様子をまじまじと見ていると。

「なに?」

「イチくんって子どもの相手するの上手……」

もしかして小さい弟か妹がいるのかな。

私には兄弟や姉妹がいないから、ふうちゃんといるのはすごく新鮮だったけど。

「あー、写真撮りにたまに公園行ったりするからかな。そこでよく子どもに話しかけられたりしてるから」


< 44 / 207 >

この作品をシェア

pagetop