お日様のとなり
「俺、向こうから歩いてきたけど、それらしい人は見かけなかったよ」
「そっか……」
ってことは、向こうにはいないのかな……。
海と反対側にある高台をずっと真っすぐ歩いてきたけれど。
もしかしたら砂浜の方へ行ったほうが良いのかもしれない。
「ねぇ、みゃーちゃん。このおにーちゃん誰?」
「ふうちゃん、この人はね、イチくんって言うんだよ」
「いちく……?」
また違う呼び名で覚えてる。
子どもって本当に面白いな。
子どもの純粋さに感心していると、イチくんはふうちゃんの前にしゃがみ込んで目線を同じにした。
「違う。俺の名前はイチ。言ってみな」
「イチ?」
「そう。ちゃんと言えんじゃん」
「偉いな」とイチくんは目を細めてふうちゃんの頭を撫でた。
ふうちゃんは嬉しそうに「イチ!イチ!」と何度もイチくんの名前を呼んだ。
ふうちゃんはすぐにイチくんに懐いて、何がどうなったのか、最後には肩車をしてあげていた。
その様子をまじまじと見ていると。
「なに?」
「イチくんって子どもの相手するの上手……」
もしかして小さい弟か妹がいるのかな。
私には兄弟や姉妹がいないから、ふうちゃんといるのはすごく新鮮だったけど。
「あー、写真撮りにたまに公園行ったりするからかな。そこでよく子どもに話しかけられたりしてるから」