お日様のとなり
「ってゆーか、暑い!」
イチくんが声を上げる。
そういえば、テントを離れてからどれくらいの時間が経ったのだろう。
森園先輩が言っていた通り、一度休憩しに戻った方が良いのかもしれない。
「イチくん、戻ろうか」
「嫌だ。テントまでだいぶあるし、面倒くさい」
「そんなこと言ったって」
その場に座り込むイチくんを一瞥して、拠点の方角に目を向ける。
すると、向こうの方に小さく微かに見えるテントに、どんどん歩く気力を吸い取られていくのも確かで。
あそこまで行くのに何分かかるんだろう。
部長に言われたことも守れないし、思い返してみればこれという写真もまだほとんど撮れていない。
まともな収穫といえばフナムシの写真くらいだ。
フナムシ……好きになれないけど。
家でたまに出くわすアレに似ていて。
うげ。思い出すのはやめておこう。
あとでイチくんに消去の仕方を教えてもらわないと。
「ねぇ、俺らも海入ってみる?」
突然の提案に目を丸くする。
でも今日は海に入る予定ではないから、水着を持ってきていない。
イチくんは私の返事も待たずに靴と靴下を放り投げて、ジーンズの裾をくるくると折り曲げて準備万端。
あっという間に波打ち際に足を浸しに行ってしまった。