お日様のとなり
「あー、もうダメ!もう走れない」
ヘトヘトになって砂浜に仰向けで転がると、ドシャっと音がした。
波打ち際からは、さっきの子どもたちの楽しそうな声が聞こえる。
子どもの体力って、果てしない……。
そういえば、イチくんはどこに行ったんだろう。
途中から姿が見えなくなったけど、子どもたちから逃げるのに必死でそれどころじゃなかった。
先に戻っていたとしたら、裏切り者!って思いっきり罵ってやろう。
そう思っていると、目の前が急に陰ってイチくんがひょっこり顔を出した。
「あーあ。濡れた格好でこんなとこ転がって、後で後悔しても知らないよ」
「……なんかもう、どうでも良いと言うか」
もとはと言えば一体誰のせいでこんなことになっていると思っているのか……。
濡れた服が肌に張り付いて気持ち悪い。
けど、体力がゼロになった体で砂浜に寝そべるのって、ちょっと気持ち良いかもしれない。
目を閉じれば聞こえてくる波の音が涼し気で、身体が冷えているからか太陽の陽射しまでもが心地よい。
隣にイチくんが座る気配がして、身体を起こす。
イチくんは両手に持ったペットボトルの飲料水を一つ、私に手渡した。