お日様のとなり
「はい」
「ありがとう」
イチくん、飲み物買いに行ってくれていたんだ……。
そういえば喉もカラカラだったんだっけ。
「あっ」
キャップを開けようとしたら、手が砂まみれになっていた。
そしたら困ったようにイチくんが笑って、代わりに蓋を開けてくれた。
並んで静かにジュースを飲む私たち。
お互いの髪からはポタポタと水滴が落ちて、下を向いて見れば水たまりが出来ていた。
「なんか、こんなに濡らしておいて何だけど、水着持って来いよって感じだよね……」
ぽつり私が呟くと、ぷっと吹き出したイチくんは「だな!」と笑った。
どうしてだろう。
私の言葉で、行動で、イチくんが笑ってくれるとこんなにも嬉しい気持ちになるのは。
「あの、イチく……」
イチくんに声をかけようとしたその時。
「あー!隊長、目標人物発見しました!」
向こうから真央先輩の声がして、その後ろには森園先輩の姿も。
私たちを見つけると、森園先輩は早足で真央先輩を追い抜いて、目の前で止まった。
「コラ!2人共、こんな長時間こんな所で何やってたんだ!」
仏のように優しい顔の森園先輩が怒っている。
「炎天下で一度もテントに戻らないで、何のために最初に注意したと思ってるんだよ」