お日様のとなり
「さて、戻ってきたは良いけど、このまんまじゃ帰れないな」
改めて、私とイチくんの格好を見て森園先輩が大きく息を吐く。
森園先輩の言う通り、未だ水が滴るこの格好で電車に乗るのは他の人に大迷惑をかけてしまう。
「大丈夫っすよ。こうしてテントに干しとけばすぐ乾きます」
「ぎゃー!こんなとこで急に脱ぐな!バカイッチー!」
ためらいもなく上着を脱いで、テントのてっぺんに服を乗せる。
真央先輩が顔を真っ赤にしてイチくんを怒鳴った。
「イチはそれで良くても、垣谷さんはそういうわけにいかないだろ」
「あ、じゃあこっちの服着れば?俺海入る時一枚脱いだから、こっちは無事だし」
涼しい顔して差し出されるティーシャツ。
これは、さっきまでイチくんが来ていた服。
異性から服を借りるなんて、そんなの初めてなんだけど……。
「まぁ背に腹は変えられないって言うしね。入り口にシート掛けとけば目隠しになるし、テントの中で着替えてくれば?」
真央先輩の言葉に迷いながらも頷いた。
「じゃあ、そうします……。イチくん、これお借りします」
そして着替えが終わり、テントから顔を出すとそこにはイチくんしかいなかった。