お日様のとなり
ニッと歯を見せて笑った真央先輩の頬が少し照れているように見えたのは、花火の色に照らされていたからなのか。
私の傍を離れてまた花火と戯れ始める真央先輩の姿をぼうっと眺めていると、私の隣にイチくんが並んだ。
「手元よく見てないと火傷するよ」
「あ、うん……」
身体から花火を離すと、少しして火が消えてしまった。
持ち手ギリギリまで燃えることはない、と。なるほど。
燃え残った部分を見ながら、バケツの水に浸す。
イチくんは慣れた手付きでライターを使って火を付けると、またすぐに新しい花火を持たせてくれた。
「ありがと……」
「うん」
「手持ち花火って、スーパーとかで売ってるのは見たことあるけど、こんな感じなんだね」
自分の背丈ほどある塀の向こうに同じくらいの歳の子が住んでいた。
その家族が庭で花火を楽しんでいる光景を、私は一人ぼっちの部屋の中でただ想像することしか出来なかったあの頃。
窓から聞こえる声と微かに香る煙の匂い、そして花火に照らされて塀に映った無邪気に踊る子どもの影。それらを毎年のように眺めながら、ただの想像でしかなかった映像が、こうして目の前にはっきりと表れる。
現実の花火は思っていたよりもずっと小さかった。種類ごとに異なる色も、火花の形がそれぞれ違うことも、初めて知った。
長いとはいえない瞬間のうちに一生懸命煌めく様子は儚くて、寂しいけれど何か感じるものがある。
シャッター音が鳴り、私は花火から音の方へ視線を逸らせた。
「ねぇ、こんなに暗いところでも写真ってキレイに撮れるものなの?」
「撮れるよ」
「そっか」
今度見せてもらおうと思った。
撮り方のコツを教えてもらって、夏の花火大会にも今年はカメラを持って足を運んでみようかとか、そんなことも考えた。
すると。
「花火大会、行く?」