お日様のとなり
トライアングル
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「みあ、お昼ご飯食べよ!」
昼休みになり、お弁当の入った袋を持って苑実が私の席に駆け寄って来た。
「今日は昼練ないの?」
「期末前だからね。夏の大会も大事だけど、赤点取ったらメンバーから外すって。うちのコーチそっちに関しても厳しいからさ」
一つの机に向かい合って座りながら、げんなりとした顔で話す苑実。
私も鞄からお弁当箱を取り出して、机の上に広げた。
「でも、私は苑実とゆっくりご飯が食べられて嬉しいよ」
素直な気持ちを述べれば、苑実が驚いた顔をしてお弁当に伸ばしていた箸を止める。
「……みあ、何か変わったね」
「え、そうかな?」
「うん。なんか雰囲気が柔らかくなったというか、生き生きしてるというか」
自分では自覚はなかったけれど、言われてみれば前よりも昼休みを迎えるのが然程苦痛ではなくなったかもしれない。
試合前になると昼ご飯を食べることもままならない苑実を慌ただしく見送って、残りの時間をどう過ごそうかと考える日々だったけれど、最近はそれもない。
「それってやっぱり写真部に入ったから、だよね?」
苑実の言う通り、目に映るものがだんだん色付いて見えてきて、あの風景はこのアングルで撮ったら素敵だろうなとか、そんなことを考えるようになったのはやっぱりカメラを始めてからだと思う。
こくりと頷けば、苑実は笑って「良かったね」と言ってくれた。