お日様のとなり

「橋本さんて、安藤伊智と仲良いんだ?」

「そうみたい、だね」

色々な部活に顔を出すイチくんだから、それなりに交流があるのは当然のことなのに、もやもやと違和感を感じてしまっている私。

教科書を持つ手にぎゅっと力が入った。

「行こっか」

「うん……」

再び歩き始める私たち。

すると。

「みあ!」

私を呼ぶ声に振り返ると、体育倉庫に橋本さんを置いてこちらに向かって走ってきたイチくん。

野次を飛ばすイチくんの友達に顔を向けると、橋本さんがこちらを見ているような気がして、どきりとした。

思わず下を向く私の顔を、いつものようにイチくんが覗き込む。

「みあ、何か顔赤くない?カゼ?」

「ち、違う。平気だから」

額に伸ばしてきたイチくんの手をそっと押し返す。

変な顔をしてさらに顔を近付けようとしたイチくんだけど。

「ちょっと、うちのみあに近付き過ぎなんじゃないの」

苑実の剣幕に苦笑いして、イチくんは一歩退いた。

「どっかの天然タラシ野郎と違って、みあはピュアなんだから!あんまり苛めないでよね」

「肝に銘じておくよ」

苑実に詰め寄られて降参のポーズをとったイチくんは、私を見て「じゃあね」と笑い、友達のところに戻っていった。

最後までイチくんの顔を直視出来なかった私は、違和感を訴えて鳴りやまない心臓を抱えたまま。

「ところであいつ何しに来たの?」

「あ、うん」

「はあ?みあまでどうしちゃったわけ?」

地に足が付かない、ふわふわしたおかしな気持ち。

どうやって移動教室の場所まで辿り着いたのか分からないくらい、動揺していた。

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