お日様のとなり

写真部の活動は基本的には自由参加。

テスト前だからといって活動を規制されることはないけれど、自分の学力にそれほど余裕のない私。

それなりに勉強しておかないと、赤点を取って夏休みに補習なんてことも他人事ではない。

今日はまっすぐ家に帰ろうと帰りのホームルームの時には心に決めていたはずなのに、廊下を歩く足は自然と旧校舎の方に向かってしまう。

立ち止まり、踵を返す。

だけどまた立ち止まって、少しだけ……とまた振り返る。

「何やってんの?」

背後からの声に、肩が飛び跳ねた。

「イチくん、なんでこんなところに?」

「俺が先に聞いたんだけど」

眉を下げて笑うイチくんの顔に、また心臓が変なリズムを刻み始める。

胸に手を当てると、大きくなった鼓動がはっきりと伝わって。

もしかして、本当にカゼを引いてしまったのだろうか。

テスト前にカゼなんて、困る。

「みあ、入んないの?」

気付けば部室の前でイチくんが待っていた。

少し考えて、その問いかけに私は首を横に振った。

「ちょっと調子悪いみたいだから、やっぱり今日は帰るね」

もしもカゼだったら、みんなに移してしまうと大変だから。本当は少し息抜きが出来たら良いなと思ったけれど、元気になったら必ず来よう。

自分で決めたことなのに、部室に背を向けると惜しい気持ちが溜め息になって零れ出た。

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