お日様のとなり
数歩歩くと、足音が近づいてきて、イチくんが隣に並ぶ。
横を向いて首を傾げると。
「俺も帰る」
「え、いいの?」
「別に、部室で勉強して帰ろうと思ってただけだし。調子悪いなら送ってく」
そんなつもりで言ったわけじゃないのに、悪いことをしてしまった。
全てを口に出すことは、時には良くない展開を生むこともあるのだと気付いた。
下を向いていると、イチくんがぽんと私の頭に手を乗せる。
「俺が勝手にやってることだから、みあは気にすんな」
また、心の中を読まれた。
思わず顔を上げてしまいそうになって、ぐっと堪えた。
だって今、私、別のことも考えてるから。
悪いなぁと思う反面で、イチくんと一緒に帰れることに喜んでる。
体調の悪い私を心配して一緒にいてくれているのに、私ときたら何て軽薄なことを……。
呆れられて、嫌われることを恐れた私は、隣を歩くイチくんの顔を見ることなんて出来なかった。