お日様のとなり
イチくんは誰にでも優しくて、そこにいるだけで場が明るくなるような、まるで太陽みたいな人だと思う。
だけどイチくんのその聞き方は、私の考えが間違っていると言いたいのだろうか。
誰にでも優しくしているわけじゃない。
だとしたら、イチくんが私に向けてくれているのは優しさではないの?
戸惑いが繋いだ手から伝わったのか、困ったように笑いながら振り返ったイチくんは、歩く歩幅を小さくして。
「ごめん。今のはちょっと意地悪だった」
そう言ったイチくんに、私は顔を上げてぶんぶんと首を横に振る。
気付けば駅はもうすぐそこだった。
もう少しゆっくり歩けば良かったとイチくんが呟いて、後ろから来た車から庇うように歩く場所を交代してくれた。
自然と離れてしまった手を、自分から繋ぎに行くことは出来ない。
そもそも私を歩かせるために引いていた手だ。
私の足はちゃんと動いているから、もうその必要もない。
行き場をなくした手は、寂しさを埋めるように肩にかかる鞄の紐に吸い寄せられていった。