お日様のとなり
駅に入ると、ちょうどやってきた電車に2人で身体を滑り込ませる。
イチくんが下りる駅は、たしか3駅後。
私もイチくんと同じ駅で降りるのだけど、そこでもう一本電車を乗り次いで、家の最寄り駅はその1駅後。
ぽつん、と一人分空いた席を見つけて「イチくん、ここ空いてるよ」と声をかければ、「何言ってんの?みあが座りなよ」と笑った。
でもその後すぐに杖をついたおばあちゃんが電車に乗ってきたので、その席はおばあちゃんに座ってもらうことにした。
向かい合って、扉の横に背中を預ける私とイチくん。
電車が動き始めて、ビルの隙間から時々顔を出す夕陽がイチくんの髪をオレンジ色に染めた。
腕を組んで流れる景色を眺めるイチくんは、そこにいるだけで絵になって。
他校の制服を着た女の子がちらちらとイチくんに視線を向ける。
目のやり場に迷った私は、イチくんにならって窓の外を眺めることにした。
見慣れた景色、乗り慣れた電車。
そのはずなのに、目の前にイチくんがいるというだけで、そわそわと落ち着かない。
周りの人に不審に思われていないかどうか心配だった。
乗ってみれば3駅なんてあっという間で、大した会話も出来ないまま、イチくんの最寄り駅に辿り着く。
2人で電車を降りて、イチくんは改札へ向かう。
そのはずだった。