お日様のとなり
「なに?」
お先にどうぞと言っているみたいに、ふわり、イチくんが目を細める。
そんな風に待っていられると、逆に言いにくくなってしまうんだけど。自然にやっているイチくんは、やっぱり少し天然なのかもしれないと思った。
「……私が先に言っても、イチくんもちゃんと話してくれる?」
そう聞いたのは、あの時もイチくんは何かを言いかけて、聞きそびれてしまったから心配で。
身長差のあるイチくんの顔を見上げる。
するとなぜかイチくんは顔を赤らめて一瞬別の方角に目をやった。
首を傾げて見つめていると、突然頭を何かを誤魔化すようにわしゃわしゃと撫でまわされた。
「分かったから。無意識にやってるそれ、他の男にはしないでね」
「う、うん……?」
それって、なんのことだろう。
他の男にはするなって言うのは一体……。
「で、みあが言おうとしてたことは?」
「あ、うん。もしも、もしもね、イチくんさえ良かったらなんだけど」
あれ、なんで私こんなに緊張してるんだろう。
一番言いたかった言葉の手前で踏みとどまってしまう自分の背中を心の中で必死に後押しする。
言え、私。
頑張れ、私。
「花火大会、一緒に行きませんか?」