お日様のとなり
言った……。
言えた……!
たったそれだけの言葉を吐き出すのに、こんなにも体力を使うなんて。
早くなる心臓を落ち着けようと、はあーと深く息を吐く。
すると、向かい側から同じように大きく息を吐いているイチくん。
「なんで俺、みあの話を先に聞いちゃったんだろ」
後悔してるようなその言葉と声に、ガーンと頭の上に重い物が落ちてきたみたいに衝撃が走る。
それは、聞きたくなかったということだよね。
しゅん、とその場にしゃがみ込むイチくんをあわあわと見下ろす。
なかったことにしたい。
とてつもなく、なかったことにしたい。
勇気を出して言った手前、出来れば今言ったことをイチくんの記憶から消去して頂きたい。
「かっこつけて、先に話させるんじゃなかった」
「ご、ごめんなさい……」
「いや、みあは悪くない。ただ自己嫌悪してるだけ」
項垂れるイチくんが、ゆっくりと顔を上げる。
「イ、イチくんが言おうとしてたことって……?」
「俺も同じこと言おうとしてた」
「え……?」
「花火大会、俺と一緒に行きませんか?つーか、行こ。決まり、ね」
「は、はい……!」
何度も何度も頷く私を見て、イチくんは眉を下げて困ったように、でも嬉しそうに笑った。
あーもう、超カッコ悪い。と不貞腐れたように地面に吐き出すイチくんを、私は信じられない面持ちで見下ろし続ける。
きっと今、大金を使って宝くじを何枚買ったって当たることはないだろう。
神社で何回おみくじを引いたって、出るのは大凶ばかりだろう。
そう思うくらい、今ここで、自分の持ってる運を全部使い果たしてしまった気がするから。