お日様のとなり
「あ、あれ私の家」
歩いていると近くまで見えてきた見慣れた屋根を指差して、イチくんに知らせる。
「そっか。じゃあ俺帰るね」
「うん、こんなところまで送ってくれてありがとう」
お礼を言えば、背中を向けて来た道を戻っていくイチくん。
後ろ姿を見送っていると、何か思い出したのか「あ」とイチくんの声が聞こえて、くるりと振り返る。
忘れ物?
と、そういえば、ここまでの電車賃渡すのを忘れていた。
鞄から財布を出して、向かってくるイチくんに私から走って行く。
「イチくんお金だよね?」
「は?違うし」
何言ってんの?と言いたげな、不機嫌な顔をされてしまった。
違った。
それでも返さなきゃと、イチくんの手に小銭を握らせる。
「いやいらないから」
「ダメだよ。海でもそう言って飲み物代受け取ってくれなかったでしょ?」
うーん、と悩んでイチくんはしぶしぶポケットにお金をしまってくれた。
「みあって意外と頑固だよね」
「意外とって……お金は大事だよ」
「はは、なんかそれどっかで聞いたことある」