お日様のとなり

静かになって、後ろの方から下校途中の中学生の笑い声が聞こえて振り返る。

「みあ」

名前を呼ばれて視線を戻すと、イチくんの指が頬に伸びてきて、優しく撫でるそのくすぐったさに目を閉じる。

すると次の瞬間、ムニッとつままれて。

この人は一体何がしたいのだろうと眉間に皺を寄せてイチくんを見た。

ふっと笑うイチくん。

「言っとくけど2人でだから」

脈絡のない言葉にぼーっとしていると、イチくんは「花火、今度は2人で見よう」と付け足した。

2人、か。

もしかして、それを言いに戻ってきたのかな。

って、え?2人?!

意味を理解してはっとした時には、イチくんはもう歩き出していて。

「ば、ばいばいっ」

遠くなっていく背中に、迷った末に思いついた言葉を投げると、イチくんは顔だけ振り向かせて片手を上げた。

見えなくなるまで見送って、それから私も家に向かった。

一人で歩いていると、またあの感覚。

地に足がつかないような、ふわふわとした気持ち。

カシャンと音を立てて家の門を開けば、ちょうど向こうから歩いてきた人に声をかけられた。

「遅かったな」

「あれ?大蔵?」


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