お日様のとなり
「筋トレばっかりしてるんだって、苑実から聞いたよ」
「そういうお前は写真部入ったんだってな」
無造作に電子辞書のボタンを弄りながら、塀にもたれかける大蔵。
塀から軽く飛び出して見える頭に、身長も伸びていると気付いて密かに目を丸くして眺めた。
「みあが部活とか、心配でしかないんだけど」
「失礼だなぁ。幼馴染なら少しは応援してよ」
「あちこち連れ回されてんだろ?サッカー部とか」
きっと話したのは苑実だろう。
「それは初日だけ。最近は自分で好きな場所探して、自由に撮ってる」
そんな話をしていると、またカメラが恋しくなってきて。
まだ始まってもいないテストが早く終わればいいのにとさえ思う。
「あ、今度大蔵も撮りに行ってあげようか?」
指でフレームを作って大蔵に向ける。
ファインダー越しの大蔵は、口の端を上げて意地悪く笑うと私の額をコツンと小突いた。
「似合わねぇことしてんなよ、バーカ」
バカと罵られたことよりも、似合わないと言われたことの方が気になって、額をさすりながらムッとした顔で睨むと、大蔵は瞬きもせずまっすぐに私を見つめた。
「じゃあ、俺行くわ」
ぱっと目を逸らすと、何事もなかったように背中を向ける大蔵。
「うん」
「お前勉強苦手なんだから、赤点取らねーようにせいぜい頑張れよ」
そんなの分かってるよ。
とは言わなかった。
なんか最後、大蔵変な顔してたな……。
後ろ手にヒラヒラさせる大蔵を見送って、首を傾げながら、私も家に入った。