お日様のとなり
思い出の写真

***

「くあー!終わったあー!」

テスト最終日。

最後の科目が終わり、監視の先生が教室を出た瞬間、苑実が大きく伸びをして叫んだ。

難しかった問題の答え合わせをする人や久しぶりの部活に喜ぶ人、項垂れる人、放課後どこへ行こうかとお喋りに花を咲かせる人。色々な人たちの声で、一斉に賑やかになる教室。

「みあー!」

すがすがしい笑顔で苑実が私の席に駆け寄った。

「みあも今日から部活だよね?」

「うん」

「よーし、テストでたまったストレスお互い発散しよー!」

おー!と片手を上げる苑実に私は大きく頷いて、机の上で両手を広げた。

そして久しぶりのカメラの感触を思い出していた。

ホームルームが終わってすぐ、苑実とは教室前の廊下で分かれてお互い部活に向かう。

早く部室に行きたくて、旧校舎までの道のりもつい早足になる。

階段を降りようとしていたら後ろから「みあ」と名前を呼ばれて振り返る。

そこには大蔵がいて、「ん?」と返事をしようとした時だった。

目の前がぐらりと揺れて、足に鈍い痛みが走る。

足を踏みはずしたのだと気付いた時にはもう自分ではコントロールがきかなくて、この後にくる衝撃にぎゅっと目を瞑る。

「あ、れ……?」

恐る恐る目を開く。

身体のどこにも痛みはなくて。

「おいっ、大丈夫か?!」

傍で聞こえた大蔵の声で自分が助かったことを知る。

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