お日様のとなり
イチくんは嘘吐きだ。
初めて会ったあの日から、イチくんは私に優しさしかもらっていないというのに。
『誰にでも優しくしてると思う?』
確かに聞いたその言葉を、私は忘れることが出来ない。
これが優しさではないと言うのなら、じゃあ一体何なのか。
いくら考えたって、この問題だけはテストのように答えが出ることはなかった。
「捻挫か。大したことなくて良かったけど、今日は帰った方がいいな」
保健室の先生に手当てをしてもらって、歩いてもそれほど痛みを感じなくなった。
テーピングってすごいと感心しながら、当たり前のように部室まで来たのに。
遅くなったわけを森園先輩に話すと、そう言われてしまった。
せっかくテストが終わって、久しぶりの部活なのに。
今日はカメラはお預けか……。
「じゃあ、コンクールの写真でも見る?」
気分の落ちた私に声をかけてくれたのは真央先輩。
棚からファイルを数冊出して、机の上に置いてくれた。
「安静にしてれば問題ないんでしょ?」
あっけらかんと言う真央先輩の言葉に、私は森園先輩の顔をちらっと見る。
「……仕方ないな。その代わり辛くなったら言うこと」
「はい」
眉を下げてしぶしぶ了承してくれた森園先輩は「まったく……」と言いながら、パソコンを開いてカタカタとキーボードを打ち鳴らした。