お日様のとなり
「ああ言って怒ったフリしてるけど、匠って実はかっきーに甘々だからさ」
「そうなんですか……?」
森園先輩の目を盗んでこっそりと真央先輩が耳打ちする。
私も合わせて声を小さくして驚くと、真央先輩はニヤニヤしながら続けた。
「今日だってさぁ、かっきーの為にコンクールに出品した歴代のエントリー写真出しとけって言ったの匠だし、教室でだってみあの撮った写真見て顔緩めてるとこあたし見ちゃったんだよね」
話に夢中になっていると、私と真央先輩の頭上ににゅっと影が差す。
「楽しそうに何話してるんだよ、なぁ?」
笑ってるけど目は全然笑ってない森園先輩が見下ろしていて。
「あはは……」と真央先輩はわざとらしく笑ったあと、カメラを持って部室を逃げるように出て行ってしまった。
ドアのところでちょうどイチくんとすれ違い、「うわっ!」と真央先輩の焦った声が聞こえて、ふっと笑い声を漏らす森園先輩の顔を私は見逃さなかった。
じっと見上げていると、私の視線に気づいた森園先輩はこちらに顔を向けるけど、恥ずかしそうに片手で口元を隠すと、またパソコンの前に戻って行った。
部室に漂う変な空気にイチくんは首を傾げながら、机に買い物袋を置いた。