お日様のとなり
「あの人、あんなに慌ててどこ行ったの?」
「うーん、どこだろう」
「人にフィルム買いに走らせといていなくなるとか……」
イチくん、フィルムを買いに行ってたんだ……。
一緒に部室に来た後、真央先輩に何か言われて不機嫌そうにまた出て行ってしまったから、どうしたのかと心配していたけれど。
袋には写真屋さんのお店の名前がプリントされていて、フィルムの入った箱がちらりと顔を覗かせていた。
「真央先輩って、フィルムの入ったカメラを使ってるんだね」
「あーそうだよ。俺もたまに使うけど、デジタルにはない柔らかさが出るし」
それにさ、とイチくんが楽しそうに話し始める。
カメラや写真の話をする時のイチくんの顔が子どもみたいに無邪気で、私はそれを見ているのが好きだ。
私の手元に置いてあるファイルを見つけると、イチくんはそこからフィルムカメラで撮った写真を何枚か見せてくれた。
確かにレトロな感じで、味がある。
中には色のない、昔のカメラで撮ったようなモノクロの写真も数枚あった。
デジタルで撮った繊細で鮮やかな写真も好きだけど、フィルムカメラで撮ったものには柔らかさの中に優しさを感じられて、こっちの雰囲気もすごく好きになった。