お日様のとなり

2人のケンカが終息したことに安堵して、ふと他のファイルにも手を伸ばす。

パラパラとページをめくっていくと、目覚えのある写真に目が留まった。

「この写真……」

「あー、それ?たしか去年の文化祭で展示したやつだね」

けろりとした顔で真央先輩が答える。

カメラの手入れをしに場所を移したイチくんの背中が、奥でぴくりと動いたような気がした。

「この写真、知ってます。去年の文化祭で見ました。夕陽に当てられた女の子のシルエットが綺麗で印象的で……。写真ってこういう風にも表現出来るんですね」

写真を見てなにかを感じたのなんて、思えばこの時が初めてだった。

それまでは写真なんてものに興味はなく、どちらかといえば苦手意識しかなかったから。

「これを撮ったのは誰ですか?」

「俺だよ」

奥から聞こえた声に顔を向けるけど、イチくんは振り返らずにカメラの手入れを続ける。

それ以上何も言わないイチくんに、少しだけ違和感を感じた。




< 93 / 207 >

この作品をシェア

pagetop