お日様のとなり

***

「あー、死ぬかと思った」

今日は終業式。

夏の地獄と化した体育館からやっと解放され、教室に向かう廊下を歩く苑実の姿はゾンビの様。

「校長の話ってどうしてあんなに長いかねぇ」

「そうだね」

「あー、とか、えー、とか何回言うんだよ!ってゆーね……」

「もしかして数えてたの?」

「20回くらいまで数えてたんだけどね、途中で諦めたよ」

「へえ……」

たわいもない話をしながら、教室に入る。

日常になったクラスの風景を明日からしばらく見られなくなるのは、少し変な気分だ。

長かった1学期が終わって、明日からは夏休み。

そうだ、明日は……。

「花火大会」

「へっ?!」

まさにたった今頭に浮かんだキーワードを声に出されて、身体が飛び上がりそうになる。

というか、飛び上がってしまった。

「な、なに……?」

丸くて大きな瞳をさらに大きくして、苑実が私を見つめている。

「いやー、明日は花火大会だねって言おうとしたんだけど、みあがそんなに驚くなんて思ってなかったからさ」

「そ、そうなんだ」

なんだか上手く目を合わせられなくて、挙動不審になってしまう。

苑実は訝し気な表情で頬付えをついて、さらに私の顔を覗き込んできた。

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