お日様のとなり
部室に戻るとそこにいたのはイチくんだけで、棚の前でファイルを開き同じページをじっと見つめていた。
私がいることに気が付いていなかったのか、私の気配に気づくと「わっ!」と焦った顔でファイルを手から滑らせるイチくん。
驚かせるつもりはなかったんだけど、悪いことをしてしまった。
「ごめん……」
「いや、俺の方こそ、ぼーっとしてた」
落ちたファイルを拾おうとしたら、慌てたようにイチくんが先に拾い上げる。
まるで、私に見られたら困るって思われているみたい。
それは、考えすぎかな……。
「先輩たちは……?」
「写真屋に買い出し。今日はそのまま帰るって言ってた」
「そうなんだ……」
だけど、考えすぎだって簡単に思えないのは、さっき見えてしまったから。
イチくんが見つめていたページの写真。
あれは、夕陽に照らされる女の子の写真だった。
見間違えるわけない。
あの写真は私が初めて綺麗だと思った写真で、何よりもそれを撮ったのがイチくんだって知ったから。
ねぇイチくん……。
その写真に写る女の子って誰?
……なんて、聞けない。
切なげに見つめるイチくんの横顔を思い出すと、そんなこと聞けない。
ねぇ、イチくん。
その女の子はイチくんにとって大切な女の子なの……?
『誰にでも優しくしてると思う?』
あの時そう言ったイチくんの言葉の意味が、分かってしまった気がした。