先生が私に恋をした~2~
重厚なドアがゆっくりと開く
術衣を着た近藤先生が隙間から顔を出した

「どうぞ」
「はい」

言葉少なめの私たちはこれからすることが分かって
いるからか、妙にぎこちなく明らかな緊張感を漂わせていた

「座って。」
「はい」
「今コーヒー淹れるから」
「ありがとうございます」

ダメだ。
変に思われる。自分から望んで来たくせに、、、
わずかに指先が震えているのが見て分かる

私はギュッと握る手に力を込めた


「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

目の前に差し出されたコーヒーを手にとり
落ち着こうと匂いを嗅ぐ。
コーヒーの香ばしい薫りが私の心を鎮めてくれた


コーヒーの香りとカップを置く音だけ
この静寂に耐えられなくなった私は、、、


「東京、、、の話はいつ公に?」

足を組み、コーヒー片手に資料を読んでいた先生が
視線を私へと変えた

「週明けには発表する予定」
「じゃあ、それまでは内緒ですか?」
「うん、まー、知ってるのは院長と副院長、事務局長
それと、奏さんだけ」
「先生たちにもまだなんですね」

一人納得して、コーヒーを飲もうと手を伸ばしたら
横から手を掴まれて飲むことを制止される
その手を辿っていくと、いつの間にか近藤先生が隣にいて
その目はすでに熱を帯びていた


「今更逃げるなよ」



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