地味子ちゃんと恋がしたい―そんなに可愛いなんて気付かなかった!
24.合コンの誘い!
新庄君の相談を受けてから1か月ほどたった火曜日の昼休みに野坂さんから内線電話が入る。
「今度の土曜日に合コンしない?」
「いいけど、メンバーは?」
「私と米山さんとあなたと新庄さん」
「この前に集まったメンバーと同じじゃないか?」
「このメンバーで飲みたいの」
「分かった。場所と時間は?」
「この前、4人で飲んだ表参道の居酒屋で同じ時間でどう? 予約は私が入れておくわ。あなたは米山さんに、私は新庄さんに連絡を入れるわ」
「OKだ」
突然の合コンの話、それも野坂さんから、一体どうしたと言うんだろう。すぐに由紀ちゃんにメールを入れておく。予定は空いていて大丈夫のはずだ。野坂さんと新庄君に僕たち二人の関係を話しておく良い機会かもしれない。
***
土曜日、由紀ちゃんと二子玉川で落ち合って、居酒屋に出かけた。約束の時間より15分も早いのに、野坂さんと新庄君がすでに到着して待っていた。4人掛けの席に並んで座っている。僕たちを見つけると手を振って知らせてくれた。
「もう着いていたのか、まだ15分前なのに」
「やはり、二人一緒に来たわね、仲がいいのね」
「それはそうと、君たち二人も仲良く並んで座っているけど」
「実は今日は磯村さんへの感謝の意味で席を設けたの。私たち付き合い始めたの。その報告と相談にのってもらったお礼のため」
「そうか、付き合い始めたのか、良かったじゃないか」
「先輩のアドバイスのお陰です。憧れの人とお付き合いできたのは」
「憧れの人だなんて恥ずかしいわ。私も迷いを取り除いてもらって感謝しています」
「いや、僕も同じように悩んで乗り越えて、ここにいる米山さんと結ばれたから」
「結ばれたってあなたたちはもうそんな関係になっているの?」
「まあ、身も心も結ばれているっていうところかな、そうだよね」
「私は磯村さんとお付き合いできて幸せに思っています」
「あの時、米山さんからの交際の申し込みを断ってよかった」
「そのおかげで僕は米山さんと付き合えたから」
「磯村さんはどうして米山さんと付き合う決心をしたのですか、よかったら教えて下さい」
「米山さんはもう分かっているだろうからここで話してもいいと思うけど、体調を壊して入院した時にすぐに見舞いに来て、僕の面倒を見てくれた。あの時、こんなにいい娘が僕の傍にいたんだと気がついた。
僕は人は孤独なもので生まれるのも一人なら死ぬ時も一人と思って、他人に頼ったりすることを自戒して生きてきた。一方で、それが分かっているから、ちょっとした人付き合いを、同期を、友人をできるだけ大切にしてきた。
僕はその時、彼女にずっとそばにいてほしいと思った。彼女に頼るとかそんなんじゃなくて、ただ、そばにいてほしいと思った。米山さんと一緒にいると心が安らいで癒されるんだ。
それは彼女が今を大事にして生きていているからだと分かった。僕もこのごろ、今がきっと一番いい時で今を大事に生きなければと思うようになっていた。きっと同じ思いをしているから癒されるんだとそう思った」
「私のことをそれほど思っていただいて恥ずかしいです。私は磯村さんと一緒にいると幸せですし、この時間を大切にしたいと思っています」
「とってもいいお話ね、半分はのろけかもしれないけど、そのとおりね。私たちは目先のことや体裁や周囲のことを気にかけ過ぎるのね。勝手に壁を作って迷ったりして、今をこの時をどう生きるかが一番大切なのにね」
「いつの時でも将来展望は必要だけど、先のことに囚われて今のことがおろそかになるのは本末転倒だと思う。今の自分に素直になることが大切だと思ってそれに従ったら、こうなったということだ」
「ありがとうございます。とってもいい話を聞かせてもらえて」
「ところで野坂さんはどうして決心したの?」
「私も磯村さんと同じように思っていた。これまで誰も頼りにしないで一人で頑張ってきた。でもね、このごろそれがどうなのと思うようになってきたの。誰かにすっかり頼ってみたい、包んでもらいたいと、癒してもらいたいと思う時があるの。寂しくて、寂しくてやりきれない時があるの。そこへ新庄さんから好きだと言われて、いままでそんなことがなかった、いえ、避けてきたのかもしれないけど、ほっとした気持ちがしました。このまま、好かれてみてもいいかなと思ったの」
「僕と野坂さんとは同じように生きてきたみたいだけど、ここへきて二人とも気づかないうちに、誰かに癒されたいと思っていたのかもしれないね。年のせいかもしれないけど」
「新庄君の思いはどうなの?」
「僕は野坂先輩に憬れて、ずっと離れたところからいつも見ていた。でも時々先輩が疲れた表情を見せることがあって、何とかしてあげられないかと思っていました。僕が一方的に好きで付き合って、それで彼女がほっとするのならそれで本望です」
「ありがとう。そう言ってそばにいてくれるだけで癒されて元気が出るわ」
「二人の相性は抜群じゃないか」
「そうみたいで驚いているの」
「僕たちも相性抜群だと思う。じゃあ、二組のカップルのために乾杯しよう。これからも仲良く過ごせるように!」
「野坂先輩、また相談にのって下さい。磯村さんのことで何か困ったことがあったら」
「喜んで相談にのるわ」
「でもそんな相談はさせないように気を付けるから」
「そういってもらえてうれしいけど、保険をかけておきます」
「僕も磯村さんには相談に持ってもらいたいです」
「新庄君は大丈夫だろう。僕よりずっと勇気がある」
「それでもお願いしておきます」
それから、今日のここでの話は4人限りと言うことにして、合コンは終了した。2組のカップルは店を出て、それぞれ別の方向へ向かう。僕たちは僕の部屋へ向かった。
***
あとで聞いた話だけど、野坂さんたちはあれから野坂さんの部屋で一夜を過ごしたとのことだった。二人ともその時がはじめてだったとか、信じられなかったけど、後日笑いながら話してくれた。
それから、新庄君は両親に野坂さんを紹介したそうだ。新庄君の両親は野坂さんをとても気に入ってくれたそうだ。
息子は女性に関心がなくて結婚できないのではと心配していたが、こんなしっかりした女性を連れてきてくれて肩の荷が下りたといって喜んでいたとか。
新庄君は一人息子だけど、いずれは家を出ると言っていた。その方が良い。まあ、うまくやってくれ!
「今度の土曜日に合コンしない?」
「いいけど、メンバーは?」
「私と米山さんとあなたと新庄さん」
「この前に集まったメンバーと同じじゃないか?」
「このメンバーで飲みたいの」
「分かった。場所と時間は?」
「この前、4人で飲んだ表参道の居酒屋で同じ時間でどう? 予約は私が入れておくわ。あなたは米山さんに、私は新庄さんに連絡を入れるわ」
「OKだ」
突然の合コンの話、それも野坂さんから、一体どうしたと言うんだろう。すぐに由紀ちゃんにメールを入れておく。予定は空いていて大丈夫のはずだ。野坂さんと新庄君に僕たち二人の関係を話しておく良い機会かもしれない。
***
土曜日、由紀ちゃんと二子玉川で落ち合って、居酒屋に出かけた。約束の時間より15分も早いのに、野坂さんと新庄君がすでに到着して待っていた。4人掛けの席に並んで座っている。僕たちを見つけると手を振って知らせてくれた。
「もう着いていたのか、まだ15分前なのに」
「やはり、二人一緒に来たわね、仲がいいのね」
「それはそうと、君たち二人も仲良く並んで座っているけど」
「実は今日は磯村さんへの感謝の意味で席を設けたの。私たち付き合い始めたの。その報告と相談にのってもらったお礼のため」
「そうか、付き合い始めたのか、良かったじゃないか」
「先輩のアドバイスのお陰です。憧れの人とお付き合いできたのは」
「憧れの人だなんて恥ずかしいわ。私も迷いを取り除いてもらって感謝しています」
「いや、僕も同じように悩んで乗り越えて、ここにいる米山さんと結ばれたから」
「結ばれたってあなたたちはもうそんな関係になっているの?」
「まあ、身も心も結ばれているっていうところかな、そうだよね」
「私は磯村さんとお付き合いできて幸せに思っています」
「あの時、米山さんからの交際の申し込みを断ってよかった」
「そのおかげで僕は米山さんと付き合えたから」
「磯村さんはどうして米山さんと付き合う決心をしたのですか、よかったら教えて下さい」
「米山さんはもう分かっているだろうからここで話してもいいと思うけど、体調を壊して入院した時にすぐに見舞いに来て、僕の面倒を見てくれた。あの時、こんなにいい娘が僕の傍にいたんだと気がついた。
僕は人は孤独なもので生まれるのも一人なら死ぬ時も一人と思って、他人に頼ったりすることを自戒して生きてきた。一方で、それが分かっているから、ちょっとした人付き合いを、同期を、友人をできるだけ大切にしてきた。
僕はその時、彼女にずっとそばにいてほしいと思った。彼女に頼るとかそんなんじゃなくて、ただ、そばにいてほしいと思った。米山さんと一緒にいると心が安らいで癒されるんだ。
それは彼女が今を大事にして生きていているからだと分かった。僕もこのごろ、今がきっと一番いい時で今を大事に生きなければと思うようになっていた。きっと同じ思いをしているから癒されるんだとそう思った」
「私のことをそれほど思っていただいて恥ずかしいです。私は磯村さんと一緒にいると幸せですし、この時間を大切にしたいと思っています」
「とってもいいお話ね、半分はのろけかもしれないけど、そのとおりね。私たちは目先のことや体裁や周囲のことを気にかけ過ぎるのね。勝手に壁を作って迷ったりして、今をこの時をどう生きるかが一番大切なのにね」
「いつの時でも将来展望は必要だけど、先のことに囚われて今のことがおろそかになるのは本末転倒だと思う。今の自分に素直になることが大切だと思ってそれに従ったら、こうなったということだ」
「ありがとうございます。とってもいい話を聞かせてもらえて」
「ところで野坂さんはどうして決心したの?」
「私も磯村さんと同じように思っていた。これまで誰も頼りにしないで一人で頑張ってきた。でもね、このごろそれがどうなのと思うようになってきたの。誰かにすっかり頼ってみたい、包んでもらいたいと、癒してもらいたいと思う時があるの。寂しくて、寂しくてやりきれない時があるの。そこへ新庄さんから好きだと言われて、いままでそんなことがなかった、いえ、避けてきたのかもしれないけど、ほっとした気持ちがしました。このまま、好かれてみてもいいかなと思ったの」
「僕と野坂さんとは同じように生きてきたみたいだけど、ここへきて二人とも気づかないうちに、誰かに癒されたいと思っていたのかもしれないね。年のせいかもしれないけど」
「新庄君の思いはどうなの?」
「僕は野坂先輩に憬れて、ずっと離れたところからいつも見ていた。でも時々先輩が疲れた表情を見せることがあって、何とかしてあげられないかと思っていました。僕が一方的に好きで付き合って、それで彼女がほっとするのならそれで本望です」
「ありがとう。そう言ってそばにいてくれるだけで癒されて元気が出るわ」
「二人の相性は抜群じゃないか」
「そうみたいで驚いているの」
「僕たちも相性抜群だと思う。じゃあ、二組のカップルのために乾杯しよう。これからも仲良く過ごせるように!」
「野坂先輩、また相談にのって下さい。磯村さんのことで何か困ったことがあったら」
「喜んで相談にのるわ」
「でもそんな相談はさせないように気を付けるから」
「そういってもらえてうれしいけど、保険をかけておきます」
「僕も磯村さんには相談に持ってもらいたいです」
「新庄君は大丈夫だろう。僕よりずっと勇気がある」
「それでもお願いしておきます」
それから、今日のここでの話は4人限りと言うことにして、合コンは終了した。2組のカップルは店を出て、それぞれ別の方向へ向かう。僕たちは僕の部屋へ向かった。
***
あとで聞いた話だけど、野坂さんたちはあれから野坂さんの部屋で一夜を過ごしたとのことだった。二人ともその時がはじめてだったとか、信じられなかったけど、後日笑いながら話してくれた。
それから、新庄君は両親に野坂さんを紹介したそうだ。新庄君の両親は野坂さんをとても気に入ってくれたそうだ。
息子は女性に関心がなくて結婚できないのではと心配していたが、こんなしっかりした女性を連れてきてくれて肩の荷が下りたといって喜んでいたとか。
新庄君は一人息子だけど、いずれは家を出ると言っていた。その方が良い。まあ、うまくやってくれ!