壊れるほど君を愛してる
今日はクリスマスだ。俺は待ち合わせ場所で征也達を待っていた。
誰かの話し声が聞こえた。気付けば、光一達が来ていた。
「よっ!あの本読んでる?彼女が早く最後まで読んでほしいって言ってたけど」
「お前、彼女居たのかよ」
俺に話し掛けてきた優樹の言葉に突っ込む光一。
「うーん。俺の彼女は翔の元カノだからね」
光一は驚いて目を見開いている。同じ中学校だった奴らも唖然としている。
「優樹、言わない方が良かったんじゃねぇの?」
「えっ?」
意外と空気が読めない優樹には、団体で行動させるのは難しいと思った。
「おーい!」
そんな時に征也が来た。俺達は征也に案内されて家に向かった。
「ここが俺ん家の別荘だよ」
そう言われて見た目の前の建物は、豪邸と言っても良いぐらいの大きさだった。俺達は唖然とする。
征也は俺達を家の中に案内した。パーティー会場だと言う場所はけっこう華やかなものであった。
「この家はお祖父様が住んでいるんだ。俺らは別荘として使っている」
「おっ、お祖父様……?」
光一はその呼び方にも驚いていた。
「お祖父様は元県知事だからね。様付けをしろって母さんに言われてんだよ」
「元県知事……」
光一はかなり圧倒されているようだった。俺と征也は目を見合わせて笑った。
「征也、ケーキ運んで!」
「はーい」
どこからか、征也の母親だと思われる女性の声が聞こえた。征也は走り去って行った。
「メリークリスマス!」
征也がそう言って笑った。後ろで征也の母親も笑っていた。
「うわぁ、たくさん友達が居たのね。羨ましいわ」
「母さんは社長の隣しか居ないから同僚とか居ないんでしょ?」
征也の言葉に母親は笑っていた。俺はそれが羨ましいと思った。いつも家に母親が居ないからだ。
みんなは美味しそうにケーキを食べている。俺はそれに何か物足りなさを感じていた。こんなご馳走があるのにこれ以上何かを求めても意味が無いのに。
「翔、どうした?」
征也が心配そうに話し掛けてきた。
「ううん、何でもないよ」
「そっか、楽しんでね。翔にはたくさん用意してあるんだ!」
征也は小さい子どものように胸を張って笑っていた。