壊れるほど君を愛してる
生徒会選挙の後、爽とあの女のクラスが学級閉鎖になった。爽に詳しく聞くと、クラスの人がほとんど休んでいたらしい。
放課後、俺は誰も居なくなった二年生の教室を見に行った。爽には彼女の名字だけ聞いてある。
爽と彼女のクラスは案外普通なクラスだった。掲示物は派手な物が無いし、色んな物が綺麗に整頓されている。男子が使っていると思われるロッカー以外は……。
俺は教卓に置かれた座席表を見つけた。彼女の席は教卓のすぐ目の前だった。俺と同じ席だったのか。
「西宮莉奈(にしみやりな)……」
出席番号が書かれたところを見る。18番だな……。
俺はあの女の席に座る。窓の外を眺めると、雪が降ってきた。
何で俺は、こんな女に深入りしているんだろう。嫌いなら忘れればいいのに、すれ違った時に見たあの姿が忘れられなかった。
「翔……?」
何でこのタイミングで君が現れるんだろう。
笑顔で俺のところに来るこの女は俺の彼女の咲花だ。
「何で二年生の教室?」
そう言われて、言い訳を考えていた。
「えっと……忘れ物取りに来たら場所間違えたんだ!」
「そっか……」
咲花は静かに頷いて、別れの言葉を告げて去って行った。
俺は咲花に告白されて適当に付き合っていた。学校にイチャつくことは無かったし、キスなんかしたことがない。
あの女は家で何してるんだろう。家族と笑って過ごしているのかな。
あの女は俺が自分の席に座ったことも知らずに座るんだろうな。
俺は立ち上がり、教室を出た。玄関に行くと、寒そうに待つ光一が居た。俺は光一に謝って一緒に帰った。