壊れるほど君を愛してる
ある日のこと。俺はまた咲花に呼ばれて、体育館前にある東渡り廊下に来ていた。
「ねぇ、連絡先交換しよう」
咲花にそう言われたが、俺は携帯が無いと嘘を吐いた。女と連絡を取り合う気は全く無い。
「じゃあ、一緒にどこか行こうよ!カラオケとか」
俺が彼氏だから調子に乗っているんだろう。束縛のようなものを感じる。
「いや、行ってられないよ。勉強しないといけないし」
「えー!お願いだから……」
「だから、嫌なんだって!」
俺がそう言うと、咲花は頬を膨らませた。どうやら、怒らせてしまったらしい。
「私は本当に翔が好きなの。だから良い思い出をたくさん作りたいの。翔は本当の恋したことある?」
本当の恋、か……。俺はまだしていない。まず、恋愛には興味が無かった。
「こんなに愛してるのに、ダメなの?翔はどうして付き合ったの?」
俺には断る勇気なんか無かった。仕方ないと思って受け入れたまでだ。
「もしも、翔が誰かに本気で恋をしたら応援するよ……嫌いになんかなれないけど」
咲花は俺に顔を近付けた。
「翔、これからはちゃんとしてよね?じゃあね」
咲花は自分の教室へ帰って行った。俺はその場で立ち尽くして居た。
本気で恋をする?運命の相手なんか現れないだろう。別に恋なんか興味が無い。
「本当の恋って何だよ……」
俺はそう呟いた後、自分の教室へ歩き出した。
こんな時にあの子の顔が思い浮かぶのはどうしてだろうな。