壊れるほど君を愛してる



ある日のこと。俺はまた咲花に呼ばれて、体育館前にある東渡り廊下に来ていた。


「ねぇ、連絡先交換しよう」


咲花にそう言われたが、俺は携帯が無いと嘘を吐いた。女と連絡を取り合う気は全く無い。


「じゃあ、一緒にどこか行こうよ!カラオケとか」


俺が彼氏だから調子に乗っているんだろう。束縛のようなものを感じる。


「いや、行ってられないよ。勉強しないといけないし」


「えー!お願いだから……」


「だから、嫌なんだって!」


俺がそう言うと、咲花は頬を膨らませた。どうやら、怒らせてしまったらしい。


「私は本当に翔が好きなの。だから良い思い出をたくさん作りたいの。翔は本当の恋したことある?」


本当の恋、か……。俺はまだしていない。まず、恋愛には興味が無かった。


「こんなに愛してるのに、ダメなの?翔はどうして付き合ったの?」


俺には断る勇気なんか無かった。仕方ないと思って受け入れたまでだ。


「もしも、翔が誰かに本気で恋をしたら応援するよ……嫌いになんかなれないけど」


咲花は俺に顔を近付けた。


「翔、これからはちゃんとしてよね?じゃあね」


咲花は自分の教室へ帰って行った。俺はその場で立ち尽くして居た。


本気で恋をする?運命の相手なんか現れないだろう。別に恋なんか興味が無い。


「本当の恋って何だよ……」


俺はそう呟いた後、自分の教室へ歩き出した。



こんな時にあの子の顔が思い浮かぶのはどうしてだろうな。



< 28 / 63 >

この作品をシェア

pagetop