壊れるほど君を愛してる
本に出会う



冬、またこの寒い季節がやってきた。俺は雪を踏み潰しながら歩いて行く。


一つため息を吐くと白い煙が出てきた。俺はこの季節が大嫌いだ。


俺は二年B組の教室に入る。高校に入ると組は数字ではなくアルファベットになる。


席に着くと、誰かが俺の肩を叩いてきて、俺は後ろを振り向いた。


「おはよう、翔(かける)」


そう話し掛けてきたのは、高校で唯一の友達の優樹(ゆうき)だった。イケメンでよく女子に囲まれている。


「俺、この本が好きなんだよ。お前にオススメしてやろうかなって思ってさ」


そう言って、優樹は俺に単行本を渡した。けっこう分厚い本だった。


「男子なのに恋愛小説って思うじゃん?彼女に言われて読んだけど、スゲー悲しい話で良かったよ。お前も読みなよ。いつも暇そうだから」


そう言って、優樹は自分の席へ戻って行ってしまう。俺は目の前の本を見つめた。


本カバーを捲ると、長い髪の女の子の後ろ姿が表紙に描かれていた。本をパラパラ捲ると、小さな広告が入っていた。


その広告には、この本のことも書かれていた。


『――実話の切な過ぎる話に感動の嵐!』


これは男子が読んでも見入られる話なのかは分からないが、読んでみることにした。



*****



大雨になってしまった体育祭。冷たくて、やる気も落ちる頃。彼はその場を盛り上げて、楽しませてくれていた。


雨水が滴る彼の顔がとても美しく見えたのだ。何かに心を鷲掴みにされたようにその姿に私は見入られたのだ。


結局、その日は延期になった。家に帰っても、彼の笑顔を忘れることは出来なかった。


次の週の水曜日。延期されていた体育祭が一日かけて行われることになった。喜び感じる中、悲しい感情もあった。


綱引きの時。彼が芸人の物真似をしてその場の人達を笑わせていた。私は爆笑しないように抑えながら笑った。誰かを笑顔に出来る彼を尊敬した。


―――英姿颯爽!


応援発表の時、最後にこの四字熟語を軍のみんなで叫んだ。一致団結したような気分で、とても楽しく思えた。


結果は応援賞三位に選ばれた。一個だけでも賞を取れただけで嬉しかった。


解団式。私はこれまでの感想を述べる彼を見て悲しくなってきた。


もう彼と関わることは無いだろうし、彼はもう卒業してしまう。そう考えると胸が痛むのだ。


この体育祭が終わらなければ良かったのに、私はそう思った。



*****



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