壊れるほど君を愛してる



優樹から話が伝わったのか、俺は咲花に呼び出された。誰も来ないであろう廊下で咲花と二人だった。


「翔……もう一度付き合ってほしいの」


咲花の衝撃的な言葉に俺は俯く。だけど、答えは決まっていた。


「ごめん。本当の恋なんか知らない俺だとお前まで苦しめてしまう」


莉奈を自殺まで追い込んだら、次に咲花まで追い詰めてしまったら嫌だと思ったからだ。恋愛で人を苦しめたくない。


「私はそれでも翔が好きなの!だから優樹と付き合って、翔の近くに居ようとした。翔にあの本を見せて、もう一度振り向いてほしかったの」


咲花は涙を流している。俺はその涙を拭おうとは思えない。


「俺はあの子に謝りたいから……」


「何であの後輩なの!私はずっとずっと愛してたのに、どうして?何で、私じゃないの……」


俺は振り返って教室に戻ろうとした時、目の前には顔を歪ませた優樹が立っていた。まさか、全部聞かれた……?


「咲花……」


「えっ、優樹!?」


低く怖い声で咲花の名前を呼ぶと、咲花は肩を震わせた。


「俺のことを使った?俺は頑張って告白して結ばれて喜んでたのに、自分が馬鹿みたいに思えてきたよ」


優樹は咲花を抱き締めた。俺はただ立ち尽くす。


「俺はそれでも嫌いになんかなれねぇんだよ!咲花のことを愛してるから……」


優樹は涙を流していた。俺は思った、コイツは一途で彼女想いの良い奴だと。


「ゆっくりでいいから、愛し合えるようになろうよ?翔じゃないと嫌か?」


「ううん。私、翔を諦めるから……優樹のこと、ちゃんと愛せるようになるから」


「じゃあ、これからもよろしくな。俺の彼女」


「うん……」


これ以上見てはいけないと思って先に教室へ戻ろうとすると、優樹が俺を呼んだ。


「お前はちゃんと、後輩に謝るんだぞ……」


「うん、分かってるよ」


「四人で昼飯食おうぜ……」


「そうだな」


優樹は咲花を離し、俺らはそれぞれのクラスへ戻った。


本当の恋って何だろうな。涙が溢れるほど想うことなのかな。


俺はちゃんと君に会って話がしたいな。



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