壊れるほど君を愛してる
朝起きて、俺は部屋を見渡した。そして、ここが莉奈の家で弟君が使っていた部屋だと気付く。
少し寝惚けて階段を下りると、莉奈とお父さんが居た。そして、莉奈は俺を見て――
「おはよう、先輩」
そう言ってくれたんだ。俺はあまりの嬉しさに涙が出そうになった。俺は震える声で「おはよう、莉奈」と返した。
「翔君、また泣いてるよ。男なら強く生きないと」
「弱々しいお父さんに言われたくないだろうね」
「莉奈……」
俺を慰めようとしたお父さんに突っ込む莉奈を見て、やっぱり親子なんだと思った。俺もお母さんとそう言い合えたらいいのにな。
俺と莉奈は朝食を食べて、学校に行く準備を整えて外に出た。振り返って、莉奈のお父さんに言う。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
莉奈のお父さんが微笑んだのを確認した後、俺らは手を繋いで歩き出した。
「お父さんに怒られなくて良かったですねぇ」
彼女はそんなことを口に出す。俺は胸を撫で下ろした。
また彼女は悲しそうな顔で空を見上げた。
弟君の遺影が残る部屋で俺は住ませてもらうことになった。
荷物を少しずつまとめて行こうと思っていた。
“お義父さん”と莉奈と三人で食べるご飯はとても美味しかった。普通の家族のようだった。
彼女も俺にも笑顔がたくさん溢れるようになった。俺は彼女の笑顔を見る度に嬉しくなっては胸が苦しくなる。
俺が幸せに思っていても、彼女はいつも悲しそうな顔をして空を見上げる。俺にはその理由を聞く勇気すら無かったのだ。
――君の家で家族のように笑い合えるのが俺の幸せだ。