壊れるほど君を愛してる
次の日。足は慣れたように勝手に彼女の家に着いてしまう。俺はもう一回インターフォンを押して学校へ向かった。
優樹も咲花も爽も居るのに、なぜか君だけが居ない。学校のどこを探しても居ない。君はもうここには居ないのを分かっているはずなのに。
どうしても君の存在を求めてしまう。この三ヶ月で、俺と彼女の関係は良くなってしまった。
会いたい。会いたくて、涙が出そうなほど会いたい。君に会いたい。
―――先輩、さようなら。
無力な俺では君の涙も拭えなかった。自分の無力さを痛いほど思い知らされる。
君の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。この笑顔が、君の全てが、大好きだった。
「莉奈に会いたい……」
昼休みの時。そう嘆く俺を優樹と咲花が支えてくれていた。
「それだけ会いたいと思うのは、翔は莉奈ちゃんが大好きなんだよ。莉奈ちゃんに恋してるんだよ」
「恋……?」
「そうだよ。やっと、本当の恋を知ったんだね」
咲花はそう言って笑ってくれた。
俺は、恋してるんだ……。
俺は自分の気持ちに気付いた。莉奈が好きだということを。
君に触れたい。この気持ちを伝えたい。
今日も俺は一人で泣いている。男というプライドもとっくに忘れた。
今更「愛してる」なんて叫んでも意味は無く、ただ無限に広がる空に溶けて消えるだろう。
どうか、俺のことを忘れないで欲しい。そんなことを俺は願ってしまうのだ。
会いたくても、君に会えることはないだろうから。この気持ちをどこかに捨てるか、誰かに譲ろうか。俺は前者を選ぶしかないのだ。
今日も君が笑顔で幸せに居られますように。
俺はそう願うことにした。七夕の短冊にも同じことを書いた。
君が笑って居れば、俺は充分だから。君が幸せなら俺も幸せななれるから。
あの時のように消えようとしないでほしい。ちゃんと生きていてほしい。
俺は壊れるほど君を愛してるから、想っているから。
また君に会えたら、俺は君にこの気持ちを伝えるから。