壊れるほど君を愛してる
荷物をまとめて、お父さんの転勤先である“大阪”に行った。近所の人達が明るく出迎えてくれた。
新しい学校は言葉の違いで少し不安だった。また一人で過ごすようになっていた。
あの時は爽が助けてくれた。そのせいで、爽は偽善者扱いをされていじめみたいなのをされていた。
誰も話し掛けてはくれない。外見と言葉の違いでこんなに嫌がられることなんだ。
先輩に会いたい。どうか、私のことを忘れないでほしい。そう願うばかりだ。
昼休み、私はいつも屋上で食べている。誰も居ない静かな感じが好きなんだ。
だけど、今日は誰かが入ってきた。ピアスに金髪って、ヤンキーとかだよね?
私は隅に移動した。誰も関わって来ないだろうから。
「おい」
友達でも呼んでいるのかな。そう思い、気にせずにお弁当を食べる。
「おい、そこの転校生」
「えっ、私?」
「お前しか居ないだろ」
私が呼ばれて驚いた。何で、こんなヤンキーが話し掛けてくるんだろう。
「まず自己紹介やな。俺は綾瀬海翔(あやせかいと)や、よろしくな」
「あっ、私は西宮莉奈です。よろしくお願いします……」
「あのな、見た目が怖いからって、わざわざ敬語にしなくていいやんけ。俺とお前は同級生やで。それに呼び捨てでな」
自分で見た目が怖いって分かってるんだ。その見た目で同級生なんて思えない。
「お前、辛いんちゃう?話なら聞くで」
意外と心を読まれてる……。さりげなく言ってみるか。
「海翔は背が高いね……私の大切な人は背が小さかったけど」
海翔はかなり背が高いけど、先輩は私と同じくらいの高さだった。
「ほう、そいつと離れたから悲しいんやろ?」
また心を読まれて、少し驚く。だけど、なんとなく質問をしてみる。
「そうだね。海翔は何部?」
「はっ?俺はどこにも属さないねん」
ヤンキーだから部活なんてする訳がないよね。初めて出会った人間のタイプだ。
「海翔と真逆だなぁ。まぁ、色々あったからな……」
「俺が聞いてやるわい」
「えっ……」
「お前の中に溜まっている話を、な?」
仕方なく、先輩のことを言った。彼は私の好きな人とか、私のせいで記憶を無くしたとか、全てを海翔に言った。
「おっ……そこから飛び降りるちゃうか?」
「飛び降りないから!」
「すごい恋愛やな。憧れるやな」
海翔がそう言って笑うと、チャイムが鳴った。
「クラス同じやで、仲良くしような」
海翔の言葉に私は笑顔で返した。