壊れるほど君を愛してる
一日の授業が終わって、また空を見上げる。ああ、君に会いたい。
「おい、莉奈」
海翔に呼ばれて振り向いた。海翔は私に微笑んだ。金髪が夕陽の光に乱反射して綺麗だ。
「また寂しそうな顔してはる。そんなに会いたいんか?」
「……会いたいよ。本気で恋したんだもん」
「そうか。そいつが羨ましいわ」
海翔は悲しそうな顔をして言った。そんな海翔の様子に私は首を傾げた。
「お前、鈍感やんけなぁ。普通に分かるやろ?」
もしかして、海翔は私が好きなのかな。もしそうだとしたら、私は答えられない。先輩のことを忘れられるまで、まだ付き合えない。
「ごめん、私は……」
「分かっとるって。ただの一目惚れや。フラれるって分かっとったのにな」
海翔は笑った。涙目なのに笑っている。とても辛そうだった。
「本当はな、もう少し時間を掛けようと思ったんや。だがな、我慢出来へんかった……」
「海翔……」
「強引にキスしてやろうかと思った。だけど、お前には大切な人がいるんや。ショックやったわ……」
海翔は俯いて、小さく笑った。私はただ目の前の彼を見ることしか出来ない。
「ごめん。これからも仲良くしようや」
「……うん」
転校した日から一ヶ月以上は経っている。その間、私はずっと一人だった。だけど、誰かが見てくれたんだ。他人からの優しさがすごく嬉しかった。
「俺はな、お前のことが好きや。だけど、この気持ちは仕舞っておくからな。そいつに会えるまで、俺が守ったるで」
「……ありがとう。これからもよろしくね」
私がそう言うと、海翔は満面の笑みを見せた。
「ほな、帰ろうか」
「うん、そうだね……」
夕焼けに染まった世界の中、私達は一緒に歩いた。決して手を繋ぐことはなかった。