壊れるほど君を愛してる
ホテルの近くにあるコンビニに行こうと外に出ると、金髪にピアスを付けた一人の男が辺りを彷徨いていた。
お客様なら聞いてあげた方がいいかな……。
「あの……」
勇気を出してヤンキーに話しかけると、ヤンキーの男は俺を見て笑った。
「俺、ある人を探してるやんけ。俺のダチの大切な奴を、な……」
「そうですか……」
「俺は客やない。お前の名前、教えてや」
なぜ俺の名前を聞きたいんだろうと疑問に思った。
「……俺は藤田翔です」
俺の名前を告げると、そいつは目を見開いた。なぜ俺の名前を聞いて驚くのだろう。
「あの先輩やんけ!わざわざハッキングとかして調べてやったんや」
「えっ……」
俺が戸惑っていると、その男はにやりと笑った。
「敬語はやめてくれや。俺はお前より年下だからな」
金髪とピアスにその背の高さは俺より年上にも見えるのに、俺より年下だと……?俺が他の男よりチビだからか。
「まさか大阪にいるとは思ってまへんでした。これからアイツに会いに行けるますよ」
「アイツ……?」
「また記憶を忘れたとか笑わせないでくれや。アンタにとって大切な奴やと思うへんけどな」
俺にとって、大切な奴……。まさか、ここに……?
「そんなわけねぇよな……」
「そんなことあるやんけ。俺の友達がずっとお前を大切にしてはったんや」
本当に奇跡というものがあるなら、巡り会わせてほしい。大好きな君に……。
「莉奈……」
「正解や。忘れてなかったやんけ」
俺はその場に泣き崩れた。ヤンキーみたいな男は俺の背中を優しく撫でる。
「莉奈が、居る……?」
「俺と同じ学校や。アイツの誕生日に会わせてやるで」
「莉奈ぁぁ……!」
「落ち着けや。お前は俺よりアイツに相応しい者やで……」
男は泣いている俺の隣に居てくれた。俺はそいつに身を委ねていた。
「毎日毎日、先輩って言っとったわい……」
運命というのは本当にあるんだろうか。君に出会って嫌って忘れて、また出会って好きになって……。俺らはそういう運命だったと信じたい。
「会いたい、莉奈に……」
「誕生日は明後日や。その前にお前が見つかって良かった。ちゃんと気持ちも伝えてや」
俺は小さく頷いた。
やっと君に出会えると思うと嬉しくなる。ちゃんと君に気持ちを伝えよう。大好きだって……。
「誕生会は俺ん家でやる。明日は暇かいな?俺ん家でサプライズの練習やで」
「うん!」
「俺は綾瀬海翔。よろしくな」
「うん、よろしく」
ホテルの前で俺らは顔を見合わせて笑った。
早く莉奈に会いたいな……。