壊れるほど君を愛してる
「おーい!翔!」
部活が終わって帰ろうとしたら、優樹に呼び止められた。
「あの本どう?最後の悲しい展開が好きなんだよな。言わねぇけど」
「良いと思うよ。最後が気になるな」
俺がそう言うと、優樹はかなり真剣な顔を向けてすぐに笑顔に戻る。
「いやぁ、彼女が『翔が読むと悲劇が起きる』って言うから読ませてみただけなんだよ」
俺が読むと悲劇が起きるってどういうことなのだろうか。
「俺は同じ中学校じゃねぇし、お前の過去なんて知らねぇよ。だから彼女がそう言った理由が気になるんだよね」
「お前の彼女は何者だよ……」
「お前の元カノだよ。怒らないでよ!」
「怒らねぇし……」
俺の元カノがそう言うということは、中学校時代に俺が何かを犯したのかもしれない。
実は、俺には中学校の記憶が無い。体育祭で団長をしたのだけは強く覚えているが、それ以外は思い出せないのだ。
元カノは記憶を無くした俺を支えてくれていたから分かるんだろうな。
優樹と話しながら歩いていると、後ろから誰かがぶつかってきた。後ろを振り向くと、髪が長い女子が居た。
「あっ、すみませんでした!」
彼女はそう言って、走り去って行った。俺と優樹は唖然としていた。
「面白そうな後輩だね……」
「そうだな」
俺らは後輩の女子のことは忘れて、普通に雑談をして帰った。