壊れるほど君を愛してる
次の日。
「翔!」
学校に行くと、優樹がまた話し掛けてきた。
「その本、どうだった?」
優樹に昨日のことを話した。すると、優樹は驚いて固まった。
「光一がこの本の広告のあらすじを見て『何も思わねぇの?』って聞いてきたんだよ」
「じゃあ、その同じ中学校の子はもしかしたらお前のことを知っているってこと?」
「うーん。俺が記憶を無くした原因は分からないって言ってた」
「そっか……続き、読んでみれば?」
「うん、そうするよ」
俺がそう言うと、優樹は自分の席へ戻って行った。それを見た後、俺は本を開いた。
*****
ちょっと不安があるが、私はまた彼に会えることを楽しみにしていた。
今日も友達と一緒に廊下を歩いていた。すると、彼が現れたのだ。しかし、彼は私を見た瞬間に笑い出した。
すぐさまに悲劇は通り過ぎて行く。私は急いで音楽室に繋がる階段を歩いた。
本当に顔を覚えられているなんて最悪の事態だ。彼に存在を知られずに静かに片想いをしていたかったはずだったのだ。
これだと噂が出来てしまうかもしれない。私はこの先、彼にどんな顔をして通り過ぎて行かないといけないのだろうか。
これは恋をした私に神様が下した罰なのだろうか。
この想いを消せと言われても簡単に消せるはずが無い。こんなにも彼が好きなのに、想うことさえ許されないなんて酷過ぎる。
君に会いたいけど、会ってはいけない気がする。彼の人生に邪魔をしてはいけなかったのだ。
私は一人、空を見上げた。彼の笑顔が脳裏に浮かんで、とても辛く感じた。
*****
俺は、すれ違った少女を見て笑った少年が酷いと思った。
すると、脳裏にポニーテールをした女子が浮かんできた。だが、顔がよく分からなかった。自分と似たような笑い声も浮かんできた。
俺は記憶を忘れるほど何をしてしまったんだろう。もしも、記憶喪失が神様が下した俺への罰だとしたら、俺はどうしたら許されるのだろうか。
『翔、どうしたの?』
『あの子さ、俺が部活に行ってる時―――』
何かを思い出せそうだったが、その会話は途切れて消えていく。
俺はどんな罪を犯してしまったのだろうか。