壊れるほど君を愛してる
部活を終わらせ、優樹と玄関に出ると、外が異様に騒がしかった。
「翔、なんか騒がしいね」
「なんだろうね」
そんなことを言いながら二人で門のところまで来ると目を疑った。
「翔!」
そこには、近くの松島高校の制服を着た光一とその他大勢が居た。
「翔、こいつら中学の友達?」
「……そうらしいな」
隣に居る優樹を見て、光一は安心した顔を見せた。
「お前にも友達が出来て良かったよ。とりあえず、自己紹介するぞ!」
光一の後ろに居る奴らが一人一人自己紹介を述べた。
「こいつがちょっと特殊なんだよな」
そう言って光一は一人の男に目を向けた。黒髪のカッコいい男子だった。
「えっと、俺は篠原征也(しのはらせいや)。よろしく……」
その名前を聞いて優樹は目を輝かせた。
「もしかして、征也か?俺は綾田優樹、同じ東山中学校だよ!」
「えっ……あの綾田さん?だいぶ変わったね」
「まぁな。純粋になったこいつと居ると変わるんだよ」
純粋になったと言っても、ただ記憶が無くなっただけなのだ。
「こいつ、恋愛と家庭が融合しちゃって……」
「光一、一発行こうか?」
「なっ!すみませんでした!」
征也は意外と面白い奴だと思った。光一に殴りにかかろうとする征也が面白くて笑った。
気付くと、爆笑している俺をみんなが温かそうな目で見ていた。
「あっ、征也!」
「何?」と、征也は冷たい声で聞く。
「お前の恋愛話、聞いてみたいなって……」
「はぁ……。まぁ、藤田さんの過去を暴くのに必要な材料と言うならば、今度教えてあげますよ」
「敬語じゃなくていいからな……」
俺がそう言うと、征也はハッとしたように目を見開いた。
「ごめん。父が中学校の教師で母が大企業の社長の秘書だし、家でもずっと敬語だから……」
「うーん、自慢のように聞こえるのはなぜだろうな……」
「かっ、翔!本当にごめん!」
「いやぁ、別にいいよ。仲良くしような、征也」
「うん!」
俺と征也は顔を見合わせて、お互いの拳を当てた。そして、征也は「カッ」と舌を鳴らす。
なんか征也とはやって行けそうな気がしたのだ。複雑な環境だと思って、何かが勘づいた。
「今日は一緒にカラオケ行くか?」
光一の提案に皆で賛成と声を上げた。