極上御曹司に求愛されています
第三章
芹花は、パープルのドレスを着て照れた笑顔を浮かべているスマホの写真を見ていた。
写真の中の彼女と頬を寄せ合っているのは、もちろん悠生だ。
親密そうな写真をスマホで見るたび脈が速くなる。
恵奈の店の試着室で悠生が撮った写真は、綾子に確認を取り悠生自ら綾子に送った。
『結局、芹花は俺に遠慮して写真を送らないだろうから』
と言われれば反論できず、強引に綾子に連絡させられ、悠生と直接やりとりをするようになったのだ。
【芹花によく似合うドレスを着せて披露宴に行かせるので、当日はよろしくお願いします】
そんな悠生の丁寧な文面に、綾子はすぐに返事をよこした。
【オレ好みのドレスを着せて不本意ながら披露宴に行かせるけど、かわいいオレの芹花がオトコから声をかけられないように守ってくれってことですね? 承知しました。お任せください】
悠生の気持ちを自分勝手に解釈した綾子の返事に、芹花は照れて否定し、悠生は満足げに笑った。
「たしかにこのドレスは素敵だけど、私に声をかける男性なんているわけないのに」
コーヒーを飲みながら、芹花は呆れたように呟いた。
週半ばの水曜日、朝から仕事が立て込み、ようやく一区切りついた。
ここ最近、忙しく、事務所の奥にある喫茶コーナーで休憩するのも久しぶりだ。
大勢の弁護士がそれぞれいくつもの案件を同時に抱え、忙しくしているのはいつものことで、それに伴い事務仕事を担当する芹花たちも慌ただしくなる。
「お疲れさま。お昼はちゃんと食べたの?」
芹花の隣の席に、先輩の甲田可織が腰を下ろした。
手にしているカップからは、ココアの甘い匂いがしている。