極上御曹司に求愛されています
「午前中、所長に頼まれた買い物があったので出かけたついでに食べてきました」
「いつも慌ただしいわね。午後から慧太先生の取材に立ち会うんでしょう? 困る前に相談してね」
頼りがいのある笑顔を向けられ、芹花は頷いた。
「大丈夫です。忙しいですけど、どの先生も手がかからないので」
「そう? 本当に必要なのかわからない資料を集めろとか、日に何度も裁判所に行かされたりとか、お客様との約束の時間を忘れて地方に飛んじゃったりとか。あったらすぐに言ってね。私が法律ではなく常識的な判断で説教しておくから」
やけに力強い言葉に、今までにそんなことがあったのだろうと芹花は笑った。
芹花より五年先輩の可織は、腰まである明るいブラウンの長い髪をポニーテールにしている頼りがいのある先輩だ。
少したれ目でぷっくりとした唇は優しく幼い印象を与えるが、話せば弁護士以上に口が立ち、鋭い意見をさらりと言う、やり手の女性なのだ。
「そういえば、今日の慧太先生の取材のテーマはなんなの? この間みたいにファッション誌でただ笑ってるだけの取材じゃないでしょうね?」
面白がるように笑う可織につられ、芹花も笑う。
「大丈夫です。今回は新聞の取材なんですけど、各業界でこれから頭角を現すであろう三十代特集で、慧太先生はメインらしいですよ」
「だったら大丈夫かな。この間は女性読者をターゲットに慧太先生の見た目重視の意味のない取材だったもんね。でも、たしかにあの慧太先生は格好良かった」
「ふふ。同感です。あの時も取材と撮影に立ち会ったんですけど、慧太先生、写真ばかり撮られて次第に不機嫌になったんです。でも、その表情がたまらなく色っぽくて。カメラマンさんも熱が入ってました」
「だね。不機嫌で眉を寄せた慧太先生。遠くから見るには目の保養になるもんね」
小さな声で囁いた可織に、芹花も同意する。