極上御曹司に求愛されています
三井法律事務所の次期代表と言われている三井慧太は、現代表の長男で、モデルのようなルックスで知られる敏腕弁護士だ。
後継者として子供の頃から育てられ、それに見合う実力を得ようと多くの案件に向き合う努力の人でもある。
事務所に在籍する数多くの先輩弁護士たちを率いていかなければならない未来から逃げることなく真摯に弁護士としての使命を果たしている。
「いい加減、慧太先生の見た目だけじゃなく弁護士としての力量について取材してくれればいいのにね。先月の裁判でも離島の生態系を守るために住民の味方になって大企業相手に勝訴したってのに、そういう記事は小さくて、端正な顔はでっかくババーンなんだから」
ムカついた声の可織に、芹花もコクコクと頷いた。
決して見た目だけではなく、熱意と実力のある、そして必要悪である計算高さも兼ね備えた弁護士だというのに、正当に評価されないことに悔しさも覚える。
慧太の担当として事務仕事を受け持っている芹花は彼のプレッシャーや時折見せる不安定さを間近で見ているからだ。
「でも、今日の取材は写真撮影ももちろんあるんですけど、我が事務所が目指している、誰にでも開かれた法律事務所についての話がメインなので、私、楽しみなんです」
「そうね。忙しくて取材を受ける余裕なんてないのに、弁護士を身近に感じてもらうために、毎回時間を作るんだから。ほんと、いいオトコよねえ。私が結婚してなかったら絶対にプロポーズしてるわよ」
冗談のように言っているが、きっと本気だ。
それに、可織の気持ちはよくわかる。
本業よりも見た目の方が注目されるのなら、それを利用して法律事務所の扉を誰もが叩けるように、取材を受けると言ってスケジュールを調整しているのだ。
それこそプライベートを犠牲にして仕事に打ち込んでいる。
そんな姿をマスコミは取り上げることなく恋愛がらみの話題をキャッチしようと躍起になっている。