極上御曹司に求愛されています

その日の午後、三井慧太のインタビューは順調に進んだ。
事務所の応接室で記者から質問を受けている慧太に、カメラマンがあらゆる角度からカメラを向けている。
上質なスーツを着こなし、今日も安定の男前だなと芹花は部屋の片隅で感心する。
上着の袖から見え隠れする時計には見覚えがあった。
悠生が身に着けていたものと同じだ。

「最近、あらゆるメディアに登場されていますが、なにか心情の変化があったのですか?」
「弁護士の後押しがあれば生活を上質なものに改善できる人がたくさんいるんです。経済的な面で難しい人も多いかもしれませんが、私たちが役立つ方法はあるはずだと、そのことを知ってほしくて積極的に取材を受けさせていただいています」
 
矢継ぎ早に投げかけられる質問に丁寧に答え、時折考え込む慧太を見ていると、同年代であり、二人とも家業を背負う御曹司だからだろうか、悠生を思い出して仕方がない。
 
その後三十分ほど続いた取材中ずっと、芹花は慧太の向こう側に悠生を感じてしまい、落ち着かない時間を過ごした。




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