極上御曹司に求愛されています
悠生のことばかりでなく、イラスト集の発売を控えて芹花自身の取材の申し込みがかなりきていると聞いて気持ちが落ち着かなかった。
これまで、どれだけ芹花のイラストが話題になっても、決して取材を受けず顔出しは断ってきた。
自分に自信が持てない芹花にとって、マスコミに名前と顔が知られることは恐怖でしかないのだ。
けれど、星野の店の看板メニューのイラストの作家も同一人物だと公にすることを考えれば、作家の正体が芹花だと知られるのは時間の問題かもしれない。
そうなれば、面倒なマスコミが作る記事に不本意な内容が含まれることも十分あり得る。
その前に芹花が取材に応じ、イラスト集への思いを書いてもらえばいいのではないかと、所長を始め慧太からも説得されている。
慧太の取材に立ち会えば、誠意ある取材をしてくれる記者が多いこともわかっているが、生来目立つことが嫌いな芹花はなかなか決断できずにいた。
イラスト集の発売が公表されて以降、順調に予約部数も増えていて、出版社からはサイン会を開きたいとまで言われている。
弁護士という存在を身近に感じてもらいたいという思いによって、慧太は忙しい合間を縫って取材を受けているが、その思いを後押しする意味も込めて決意したイラスト集の発売。
慧太を見習いサイン会ぐらいしたほうがいいのだろうかと思いつつ、踏み切れない自分の弱さが嫌になる。