極上御曹司に求愛されています

「間に合った」
 
鮮やかな真紅の絨毯が敷き詰められた廊下を進んで中庭に出ると、悠生は芹花を振り返り、ホッとした笑顔を見せた。

「急がせて悪かったな。突然来ることになったから時間に余裕がなくて急いでいたんだ」
 
小走りに近い速さで歩いてきたせいで、芹花は少々息が上がっている。
呼吸を整えながら辺りを見回した。

「え……。これって、結婚式ですか?」
「いや、模擬結婚式なんだ。ブライダルフェアのイベントのひとつらしいけど、披露宴で実際に用意される料理を食べつつ新郎新婦の様子を確認するって聞いてる。今日はナイトウェディングの模擬披露宴」
 
芝生が広がる中庭は、照明によって明るく照らされていて、八人掛けのテーブルが六つ用意されている。
二人は中央のテーブルに案内され、腰かけた。

「知り合いが参加する予定だったんだけど、体調を崩したから代わりに行かないかって連絡があったんだ」
 
席についてすぐ、悠生は芹花の耳元に話しかけた。

「代わりにって、いいんですか? だってウェディングですよね? 私たちって、関係ないっていうか」
「別に気にすることないだろう? アマザンの料理を食べられるしデートするには雰囲気もできあがってるし」
「デート……」
「あ、始まるみたいだな」
 
悠生はそう言って、前方に視線を向けた。
中庭に続くガラス戸が開き、中から新郎新婦が現れた。



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