極上御曹司に求愛されています
明るい光に照らされ、モデルに違いない美しい男女が階段を降りてくる。
「うわあ、キレイ……」
「ブーケも素敵。あのドレスにぴったりね」
「新郎新婦、背が高くてお似合い……」
ほおっというため息とともに、感嘆の言葉がどのテーブルからも聞こえた。
すべての席が恋人同士で埋められ、中庭をゆっくりと歩く新郎新婦を見つめている。
プロのモデルが新郎新婦を演じているとわかっていても、寄り添って歩きながら途中何度も甘い表情で視線を合わせる二人を見れば、次第に本当の披露宴に出席しているような錯覚を覚える。
芹花と悠生が座るテーブルの横を新郎新婦が通り過ぎた時、芹花はウェディングドレスのレースの繊細な刺繍に見とれた。
それに、ドレスに贅沢に施されたパールの輝き。
プリンセスラインのドレスは美しい新婦のために作られたようで、本当に似合っている。
「素敵なドレス。でも、モデルさんが綺麗だからそう見えるのかな」
芹花は夢見るような声で呟いた。
すると、悠生がそっと体を寄せ、芹花の耳元に囁く。
「桐原さんのパープルのドレスを着た芹花も、あのモデルに負けないくらい綺麗だった」
「そ、それは言い過ぎです。……私はあんなにキレイでもないしスタイルもいまいちだし」
照れてうつむいた芹花に、悠生は柔らかな視線を向けた。
「そうだな、芹花にはミニのウェディングドレスが似合いそうだな」
「ミニなんて、そんな論外です」
相変わらず小声で抵抗するが、悠生は芹花の言葉を聞き流し、にっこりと笑った。
「今から披露宴用の食事をいただいて、衣装の試着もできるけど。ミニ、着てみれば? 似合うと思うんだけどな」
「試着なんて、絶対にしません」
芹花はきっぱりとそう言うと、口をぎゅっと結んで悠生から視線を逸らした。