極上御曹司に求愛されています
芹花はどうにか呼吸を整え、ひと息つく。
「ブライダルフェアだからこそ、一緒に来た意味がわからないんですけど」
連れて来られた先がアマザンホテルというというだけでもどぎまぎするというのに、目的はブライダルフェアだ。意味がわからない。
「来るにしても、心の準備と服装を考える時間をくれても良かったのに」
拗ねた口ぶりでそう言うと、突然悠生に肩を抱き寄せられ、その場にシャッター音が響いた。
「も、もう。突然撮らないでください。絶対に変な顔をしてますよ」
「悪い悪い。だけど、全然変な顔じゃない。おいしい物を食べて幸せそのもの。食事中にいつも見せるかわいい顔」
悠生は芹花の肩を抱いたまま画像を見せた。
「……ほんとだ」
悠生が言うように、おいしい物を幸せそうに目を細めて食べている芹花が画面いっぱいに映っていた。
おいしい物を食べられることはなによりも幸せなことと両親から言われて育ってきた成果がここに現れている。
「ということで、これも綾子さんに送信」
「え?」
「ん? 綾子さんから芹花との写真を色々送ってほしいって言われてるんだ。芹花に頼んでもなかなか送ってくれないから俺から送ってくれってさ」
「どうしてそんな約束をするんですか。写真なら、もう必要ないです」
どうして悠生と綾子がそんな約束をしたのかと、芹花は肩を落とした。